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ごろ太三昧

(雑種猫ごろ太の乳母日傘な日々)

2009年09月 | ARCHIVE-SELECT | 2009年11月

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スグに行キマス


「乳母のところに」


「急いで行かなきゃ」


「今スグ、今スグ」


「早く~!」


「ボク、来ました!」


「急いで来たよ!」




誕生日より保護した日より忘れられぬ日。
まだ散歩など知らぬ頃、お駕籠に乗せた坊ちゃんが実家の改装工事の大工さんをひどく怖がり玄関先で飛び出して、迷子になったことがある。

お駕籠についた飛び出し防止のリードにつないだハーネスをもんどりうって脱ぎ捨てて、遁走したまま戻らぬ彼を捜し歩いた3日間。夜は眠れず顔も洗わず食事を作るはおろか間に合わせで買って来たコンビニのおにぎりすら喉を通らず、仔猫を取り上げられた親猫のごとく坊ちゃんの名を呼びながらフラフラと町内を徘徊し、歩いては呼び呼んでは耳を澄ましてまた歩く。
ついにご乱心とご近所中で言われても否定できない取り乱しぶりであったのだ。

散らかって息苦しいほどの狭いアパートも、坊ちゃんがいなければまるで空っぽの箱である。今日もみつけられなかったと玄関を開けてがらんどうの部屋を見るのが辛かった。

そうして丸3日が過ぎた頃、実家の前でご近所さんとしばしの立ち話を終えてから、再び坊ちゃんの名を呼んで歩き出すこと十数歩。どこかから小さな小さな鳴き声が微かに聞こえたように思えて坂の途中で立ち止まる。も一度名前を呼んでみると、今度ははっきり大きな声で堰を切ったように鳴き始める。坂の途中の家の脇、通りからの落差2メートル。家と家との谷間で声をあげているのは紛う方なき大事な大事な坊ちゃんである。

091019-7.jpg谷間に飛び降り覗いてみると、積み重ねられた廃材の山から声がする。縦半分に割られた塩ビパイプの半月型の暗い隙間に真っ黒な目でこちらを見ている坊ちゃんの姿があった。大きな声で鳴きながら、しゃがんだ膝に飛び込んで来た猫を離さぬようにしっかり抱き止め中年オンナはオイオイと大声あげて泣いたのである。
暗くなり始めた空の西の端には夕焼けの名残がまだ少し。
地平線の下で燻っている太陽に背中を向けて、アパートまでは150メートル。首から下げたお駕籠の中でニャウーニャウーと大音量で坊ちゃんは鳴き続けていた。彼の確かな体温を自分のお腹に感じつつ、オイオイ泣きつつ家路を急いだ乳母だった。
それが去年の今日こと。誕生日より保護した日より、この日は忘れえぬ日となった。

間が悪く遁走が先代猫の命日と重なって1度は10月を呪ったが、涙と希望を手土産に坊ちゃんは我が家に戻って来てくれた。
それは彼との2度目の出会いである。帰る家と決めて来てくれたのだ。

091019-8.jpg
あの時乳母は決めたのだ。2度と坊ちゃんを迷子にさせぬと。そして坊ちゃんの望みにはトコトンつき合おうと。まさかその望みが散歩とは皮肉な話ではあるのだが。

普段は滅多に鳴き声立てぬ坊ちゃんは目でモノ語る無口なオトコ。よくぞあの時鳴いてくれたと思い出す度考える。自分で産んでいないからワタシは乳母なのだと言い続けて久しいが、頼りなくとも坊ちゃんは母と慕ってくれている。
散歩の途中で離れると、ホントは走って来たいのに連れ合いにジャマされて文句まで言いながら口を尖らせ追ってくるのも、母と慕ってのことなのであろう。
今日という日をこうして一緒に過ごせれば、満ち足りたキミの寝顔を見られれば、それで乳母はシヤワセなのだ。もしも坊ちゃんが鳴いたならどんな微けき声であろうと、猫の母はすぐにも駆けつける所存なのである。





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